Jul 17, 2010

合宿免許はお得に運転免許を取得することができます。

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【医薬最前線】第5部(1)

 「この10年間、日本は何をやってきたんだろう…」

 ため息のあとに、そうつぶやいたのは、厚生労働省研究開発振興課の椎葉茂樹課長。今月22日、韓国・ソウルの金浦空港。韓国での新薬開発事情の視察を終え、帰途につく中での出来事だった。

 製薬会社が新薬の承認を得るための臨床試験のことを「治験(治療試験)」という。椎葉課長のため息は、治験における日韓の格差を実感したところからきていた。

 医療充実と産業育成を狙って、韓国は2000年代に入り、国を挙げて治験体制の整備を進めてきた。

 02年には治験の実施基準を欧米基準にあわせ、海外の製薬企業が国内で治験をしやすい環境を作った。04年から全国の主要病院を「地域臨床試験センター」に指定し、インフラ整備の資金を投入。07年には国内の治験施設をつなぐ「国家臨床試験事業団(KoNECT)」を設立、情報の共有を進めてきた。

 その結果、00年に33例だった韓国の治験実施数は10年に439件にまで急増。うち海外の国々と同時に治験を行いデータを共有化する「国際共同治験」は、10年には210件と全体の半分近くを占めた。00年の実績が5件だったことを考えると、驚異的な成長だ。

 一方、日本の国際共同治験は、09(平成21)年度で113件しかない。

 国際共同治験の枠組みから外れると、新薬の日本での承認には日本単独の治験が必要になる。その結果、世界で使われている新薬が日本で使えない「ドラッグラグ」が発生。国際競争力や新薬開発能力の低下さえ招いているといわれる。

 椎葉課長が視察で目を見張ったのは「充実した設備と、院内における高い組織力」だという。日本では診療部門の中に組み込まれがちな治験の部署が、韓国では病院長の下で独立した組織として位置づけられ、スタッフも充実している。

 海外の製薬会社との意思疎通に欠かせない英語能力も重視。治験をサポートする看護師や臨床検査技師、薬剤師らに、英語能力テスト「TOEIC」で800点(通常会話を完全理解できるレベル)以上を義務づけている病院もあった。

 椎葉課長は言う。「真摯(しんし)に積極的に治験に取り組む精神は、明らかに韓国が上回っている」

 韓国に後れを取る日本の治験体制。どこに問題があるのだろうか。

 「日本は韓国のような大規模病院がなく、治験に参加する患者を一カ所に集めるのが難しい。コストも高く人材も不足している」と指摘するのは、浜松医科大臨床薬理学講座の渡辺裕司教授。日本の大規模病院がベッド数1500床規模なのに、韓国の大規模病院は2千床を優に超える。

 渡辺教授は「新しい治療を患者に届けることも医師の務め、という認識が薄く、治験などの臨床研究は評価されにくい」と日本の医師のモチベーションの低さも指摘する。

 世界140カ国以上で事業展開する米系の医薬企業「日本イーライリリー」の桑垣幸人研究開発・医学科学本部長は「英語を使いこなせる医師や看護師ら治験スタッフが少ないことも大きな要因」という。

 実際、国際共同治験経験者を対象に渡辺教授らが行った調査では、「不便、困難」な項目の1位に「英語の症例報告書の読解」があがった。

 世界の製薬企業からみると、そんな日本に国際共同治験のパートナーとしての魅力は少ない。「日本は相手にされていない」というのが、製薬業界の認識だ。

 日本側も危機は感じている。医療機関のなかには、韓国と連携することで打開策を見いだし、日本の“実力”をあらためて世界に示そうという動きも出てきている。

 2月21日、ソウル大学病院。韓国の「国家臨床試験事業団(KoNECT)」のシン・サング団長と、日本で厚労省から「グローバル臨床研究拠点」に指定された北里大学の「臨床試験事業本部(KITARO)」の熊谷雄治事業本部長が、握手を交わしていた。

 2人の手には、KoNECTとKITAROが今後、国際共同治験に限らず、治験の幅広い分野で互いに情報交換していくことなどを約束した覚書があった。熊谷本部長は「日本と韓国は、互いの足りないところを補える関係にある」とメリットを説明する。

 日本にとっての韓国は、「海外への足がかり」だ。「国際共同治験の実績を世界の製薬会社から認知されている韓国と手を携えることで、『日本が世界に対し歩調を合わせてきた』と思ってもらえるはず」と熊谷本部長はいう。

 韓国にも日本と連携を取りたい理由がある。

 新薬開発には、初期、中期、後期の3つのレベルの治験が必要だ。このうち、ヒトに初めて「薬の卵」を投与することになる初期段階や、効果を見極める中期段階は、新薬開発を判断する重要なポイントとなる。

 広くデータをとって効果を検証する後期段階に比べて、製薬会社から求められるレベルは、初期、中期の方が比べものにならないほど高い。

 重篤な副作用への対処・バックアップ態勢、データの多面的な分析・解析、商品化への見極め能力…。国家戦略として治験に力を入れ始めてからまだ日が浅い韓国にとっては、日本が蓄積してきたこれらのノウハウが魅力的に映る。

 延世大病院のパク・ミンス臨床試験センター長は「韓国は今後、『量より質』を目指していかなければならない」という。

 「韓国が世界から初期や中期の治験でも信頼を得るためにも、医薬品開発のノウハウを持っている日本と歩調を合わせていくことが重要だ」

 日本にとっても、海外への足がかりができれば、本来の強みを持つ初期、中期の治験で世界に切り込んでいくことができる。

 厚労省が平成19年に作成した「新たな治験活性化5カ年計画」の中間見直しに関する検討会では、今後のポイントとして「国内における開発早期の治験実施体制の充実」を掲げている。

 それが実現すれば、医薬品開発の地盤沈下を防ぐことになる。日本の医療、製薬業界が開発能力を上げることは、国民にとっても、よい医療を享受することにもなる。

 「日本と韓国がアジアのツインリーダーになることで、いい薬を心待ちにする人々のために役立つことにつながれば」。熊谷本部長は、そう期待している。

 競争、開発といった面で、世界から後れを取りつつある日本の医薬。政府は今年、医療イノベーション推進室を立ち上げるなど、巻き返しに躍起だ。未来の創薬に向けた取り組みをリポートする。

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